滋賀県は、かつては「近江」と呼ばれました。
その名のとおり、真ん中には海のように大きな琵琶湖があって、その周りをぐるっと取り囲むように山々が連なり、私たちの暮らしはその間の水と緑の豊かなところに広がっています。

長浜市はその北東部の「湖北(こほく)」と呼ばれる地域にあります。
今も昔も変わらずに近畿・中部・北陸を結ぶ交通の要衝として、沢山のひとやものごとの往来に向かって暮らしの半分を開きながら、伊吹山系の深い山々や北陸型の厳しい冬の気候条件によって、もう半分は閉ざされ、観音信仰や発酵食文化に代表されるような独自色豊かな生活文化を育んできました。

少し高いところに登ると、遠くまで続く山並みと青い湖面、その間に広がる田園と、小山のふもとや川の流れに沿って、小さな町や集落が点々と佇む、湖北らしい美しい景色が見られます。

私たちはこうした伸びやかな環境に結びついて、豊かな循環から沢山の楽しみや恵みをいただいて、知恵や技を受け継ぎながら、季節とともに暮らしています。

これは、そういう長浜に暮らすわたしたちの、ささやかながらも楽しい日々の暮らしを綴ったノートです。